絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー

東宝×アルファポリス「第10回絵本・児童書大賞」優秀賞受賞!
『おばけちゃんだってこわいんです』作者 しばなおさん

出版に至るまでの苦労

――たとえばどんなことに苦労されましたか。

対象年齢を意識して作ることですね。 『おばけちゃんだってこわいんです』は1〜3歳が対象なので、言葉の数、言葉のわかりやすさを大事にしましょうと言われました。そうやって考えながら言葉を選んでいくと、もう究極の世界になってくるんです(笑)。「を」を入れていいのか、「に」がいいのか……みたいなことでずっと悩んでしまって(笑)。担当さんには本当にご迷惑をおかけしましたけど、いい経験になりましたし楽しかったです。

――ストーリーは大幅には変わっていませんが、エンディングは大きく変えられています。

途中の展開で「人間の子どもに食べられちゃう」というちょっとこわいシーンがあって、子どもには怖すぎるんじゃないかという心配がありました。家族に相談して、これぐらいなら大丈夫なんじゃないかっていうラインを考えたり、絵がキュートだからそこまでシリアスに受け取られないと思うとか、色んなアドバイスをもらって調整しましたね。 でも一番悩んだのはエンディングです。 最初に応募したバージョンは、人間の子がおばけの家に来たところで終わりにしていました。その後のことは読者の想像におまかせします、という。完成した雪だるまの絵を添えて、おばけちゃんと人間の子が一緒に遊んだことを想像してもらえたらなと。

――大人向けの作品であれば、よくある終わり方ですよね。

その時の私は「仲良くしなさい」という意見をあまり押し付けたくなかったんですよね。でも書籍版では、みんなで遊んでいるシーンをエンディングにしました。それもやはり家族から「最後をはっきり描いてほしい」と言われたことが大きいですね。大人はカッコつけて「最後どうなったか考えてみなさい」なんて言えるけど、子どもとしては「え? どうなったの?」って思うみたいで。 子どものための絵本なのに子どもが納得できない終わり方はかわいそうですからね。 私はどちらも好きなんですけど。

『おばけちゃん』の絵コンテ

担当編集A/しばなおさん、エンディングをたくさん考えてくださったんですよね。

100以上は考えましたよね。時計と影の長さが変化している絵を描いて、時間がたつごとに仲良くなっていることを表現したり。思いつくとすぐ描いちゃうんですけど、編集さんから「難しすぎます」と(笑)。実際は家族が読み聞かせをしてくれるんでしょうけど、やっぱり対象は1〜3歳の子どもなので。

担当編集A/エンディングで雪合戦をする案もありましたけど、季節を冬に限定してしまうと書店さんで冬にしか置かれなくなってしまう可能性があるので、季節を問わない遊びにしましょうともお伝えしましたね。

プロのみなさんはそうやって色んなことを考えながら絵本を作っているんだなと、勉強になりましたね。

ーー絵柄は、クレヨンのようなやわらかい線が印象的です。描き方についてはどのように考えられましたか?

絵も試行錯誤しましたね。最初に応募した作品は慣れないデジタル絵だったので、荒いままだったことが心残りでした。書籍化にあたって「全部描き直しましょう」と聞いてホッとしたぐらいです。書籍版も全部デジタルで描くつもりでしたが、友人や家族に聞いてみたら「手描きのような温かみがあったほうがいい」と言われ、デジタルと手描き、半々ぐらいで描きました。手描きの部分は紙に鉛筆で描いて、水彩で色彩をしています。さらに細かい色付けなどはデジタルです。

『おばけちゃん』の下絵

――そうして完成した本をご覧になっていかがでしたか。書店さんなどには行かれたのでしょうか。

発売した時期がコロナ禍真っ只中だったので、日本にも行けず、書店さんにも行けなかったのですが、日本にいる友人知人が書店で売られている様子を写真に撮って送ってくれました。日本に帰れるようになったときに私も日本に行って、書店さんにご挨拶にも行きました。ニューヨークでは紀伊國屋書店さんが置いてくださっているので、それを見たときも嬉しかったですね。 感無量でした。