絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー

第13回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞!
『おやこ』作者 ふくかわゆめみさん

『おやこ』
ふくかわゆめみ / 著

アルファポリス第13回絵本・児童書大賞優秀賞受賞! コアラ、ペンギン、いぬ、ぶた……さまざまなどうぶつたちが、ページをめくるとぎゅ~っとくっつく親子の絵本。ファーストブックやあかちゃんのお祝いにもおすすめです。

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柔らかいタッチの絵と心地よいリズムの文章が「小さな子供向けの読み聞かせ絵本にぴったり!」と評価され、「第13回絵本・児童書大賞」優秀賞を受賞した『おやこ』。作者のふくかわ ゆめみさんは、もともと絵を描くことが大好きだったそうですが、仕事にするなんて考えてもみなかったと言います。そんなふくかわさんがなぜ絵本を描くようになったかや、『おやこ』が書籍化するまでの道のりについてお話を伺いました。

私も絵を描く仕事をしたかったのかもしれない

――優しいタッチの絵が印象に残るふくかわさんの絵ですが、いつ頃から絵を描き始めたのでしょうか。

子供の頃から絵を描くのは好きで、中学高校の美術の授業も好きでしたね。コンクールで賞をもらったこともあったので、絵は得意なほうだったと思います。 絵に対して親しみはありましたけれど、絵の道に進むという選択肢は自分の中にありませんでした。 美大ではなく普通の大学に進みましたし、大人になってからは、絵に一切触れないまま過ごしてきました。

――絵を仕事にするという考えもなかった?

好きなことって自分にとっては遊びのようなものだから、仕事にしちゃいけないんじゃないかと思っていたんです。大学卒業後は東京国税局に勤めました。所得税の税務調査を行う中で、ある画家の方との出会いが私にとって大きな衝撃となりました。どうして画家を志されたのですかと聞いたら、「好きだからやっているんです」と。その言葉が私の心に刺さりました。私も絵は好きだったけど、仕事にしちゃいけないと思っていた。けどこの人はそれを仕事にしているんだ、かっこいいなって。そして、 「私も絵を描く仕事をしたかったのかもしれない」 と思うようになりました。

過去作品の表紙絵

――素敵な出会いがあったんですね。

でもずっと絵を描いてこなかったので、どんな絵を描いたらいいかわからなくて。その後、結婚し、生まれた息子に絵本の読み聞かせをしていました。子供と会話する中で、「これ絵本にできそうだな」と思う会話が生まれることが時々あったんです。これなら私にもできるんじゃないかと思いました。その時の自分に一番近い絵画が絵本だったという感じですね。絵本を書けば物語に沿った絵を描ける。そこで初めて、絵本を描いてみようと思いました。

自分らしい作風をつかむため試行錯誤

――しばらく絵を描かれていなかったということですが、絵本を描くにあたってまずどういうところから始めましたか。

絵本教室に通ったり絵の練習をしたりはせず、いきなり自己流で絵本を作って、描きながら絵を学んでいきました。絵本って1冊に15見開きぐらいはあるから、それだけ絵を描くことになるんですよね。しかも登場キャラクターの絵を安定して描かないといけない。それが結構難しいなと思いました。

――最初に描かれたのが、絵本ひろばに投稿されている『ぼくはあめがすきなんだ』でしょうか。

実は『くものうえ』が初めて描いた作品なんですが、その後に絵を描き直し、投稿し直しているんです。掲載されている中で最初に描いたのは『ぼくはあめがすきなんだ』かもしれません。その頃は読んでもらえる人もいなかったので、読者が夫しかいなくて。夫は私が絵本を描きたいと言ったときも応援してくれて、今も最初に読んでくれるんですが、その頃は私の絵本を読むたびに、「わけわからん」と言っていましたね(笑)。私も今『ぼくはあめがすきなんだ』を読み返すと、メッセージ性が強すぎるし、全然まとまってないなと思います(笑)。恥ずかしいんですが、それも成長の過程としてみなさんに見てもらうため、あえて絵本ひろばに残しています。

『ぼくはあめがすきなんだ』

――『ぼくはあめがすきなんだ』、『おいらのこうら どこいった』までは、はっきりとした線とユーモアのある作風ですね。現在とは全然違うので驚きました。

「おいらのこうら どこいった」は意外と絵本ひろばでハートをいただけましたね。息子が「カッパとお相撲してみたい」と言ったので、息子のために描いた作品です。男の子に受ける作品なのかもしれません。

――『くものうえ』で絵のタッチや作風がガラッと変わりましたね。

その頃初めて水彩画を描いてみたのですが、水彩って油絵などと違って描き直しができないし時間もかかるし、すごく大変だったんです。「やっぱりこれからはデジタルだ」とデジタルにも挑戦してみたんですが、夫は「なんか違う」と。それで改めて水彩で描いてみた絵本が『くものうえ』でした。夫からも 「これが一番きみらしい」 と言われましたね。絵本ひろばにアップしたところ、「可愛いです」とか「ほっこりします」というコメントをいただけたので、それまでのパキッとしたおもしろタッチから、ふんわり路線で行こうと決めました。

『くものうえ』