絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー

第13回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞!
『おやこ』作者 ふくかわ ゆめみさん

読者に満足してほしい。なにより自分が後悔したくない

――ここで担当編集さんにもお話を伺います。ふくかわさんの作品の魅力はどんなところにありますか?

担当編集A:心にすっと入ってくる絵本ですよね。誰が見ても絶対に好きになるイラストが本当に魅力的だなと思います。書籍化にあたって絵を描き直していただいたのですが、どの動物もリアルに寄せた色ではあるんですが、その中にちょっと幻想的な色味が入っているんです。それはまさに絵本の魅力だと思いますし、ふくかわさんの絵は絵本の良さを見事に表現してくださっているなと。『おやこ』はストーリーラインがすごく素敵なので、 どうすればこの物語とふくかわさんならではのイラストをより魅力的に見せられるかに注力しました。 最初はマタニティ向けに描かれたということでしたが、ページをめくることで動物の動きを見せて、赤ちゃんと一緒に楽しめる方向に変えました。

ひとつの動物につき4ページを使って、動物に動きをつけたことが一番大きな変化ですね。私は透明水彩で描いているのですが、かなり淡い色合いなので、ターゲットである0歳から2歳の子どもは認識しにくいんじゃないかという問題点がありました。そこで水彩の絵を際立たせるために、あえて背景に動物を溶け込ませず、ベタで塗ることになりました。動物の種類も考え直して、最終的にこの形になりました。

『おやこ』原画

――編集者というプロの目線が入ってのブラッシュアップという作業をやってみていかがでしたか。

書籍化自体がとても嬉しいんですが、編集の方に助言していただきながら描いていくのがすごく楽しいですね。ここはこう直してくださいみたいな感じではなく、伸び伸びとやらせてくださるので、ブラッシュアップはすごく楽しいです。編集さんから「絵がいい」と言っていただけたので、その期待に応えたくて。水彩画はやり直しが効かないので、間違えたら描き直したり、結構時間がかかるんですね。そういう苦労はありますが、せっかくいただいたチャンスですし、読者に満足してほしい。 なにより自分が後悔したくないので、満足いくまで描きました。 どの絵も2回は描き直したかもしれません。

――特に苦労したところというと?

最後に人間と動物たちがベッドに入って寝ている絵があるんですが、そこは何度も描き直しました。一度OKをいただいたのですが、自分の絵じゃない気がして、また描き直させてもらいました。透明水彩で描くとき、私は紙に水を含ませてからそこに絵の具を垂らし込んで、さらに濃い絵の具を入れて薄くしたりと、グラデーションを作っていくんです。そういう透明水彩ならではの表現が大好きなんですが、最初は描き込みすぎてしまって。透明水彩じゃなくても表現できるような絵になってしまい、これが私の絵だと思われたら困るなと思って描き直しました。特に最後のページは一番印象に残るシーンだと思うので、悔いが残らないよう最後の力を振り絞りました。満足いくものになってよかったです。

――強いこだわりを持って絵本制作に取り組まれているんですね。

全然そういう人間じゃなかったんですけど、最近はいつも絵のことが頭にありますね。絵のことなら熱くなるようになりました。透明水彩ですごくいいにじみやグラデーションができたりすると、すごい幸せな気分になるんです。

『おやこ』表紙案や下書き

ママは努力して夢を叶えたから、僕は頑張ってロボット博士になる

――ふくかわさんが絵本を描く上で、お子さんとの会話は大きなヒントになるようですね。

子どもと遊ぶときは子どもの目線で会話するようにしていますね。そうすると、大人は普通だと思ってることが、子供にとっては面白いっていうことに気づけるんです。例えば、『たんぽぽのぽんちゃん』という作品は、うちの子がたんぽぽの綿毛が好きだったことから思いついたものですね。公園でたんぽぽの綿毛をずっとふーっと吹いていて。なんでそんなに面白いのって聞いたら、飛んでいった綿毛が地面に降りて花が咲くという、たんぽぽの生態が面白いみたいで。それを絵本にしてみたものですね。 なにかアイデアがほしいときは、子どもたちに「何を話してるの?」って聞いています。

ーーお母さんが絵本を描いていることについて、お子さんたちはどんな反応をしていますか?

私は子どもたちに、自分がゼロから始めて努力して達成する姿を見せたいと思っていました。今度ママの絵本が本になるんだよと言ったら、すごいって喜んでくれて。息子は、「ママは努力して夢を叶えたから、僕は頑張ってロボット博士になる」って言っています(笑)。具体的に行動するようにもなったので、背中を見てもらえたと思うとすごく嬉しいですね。

実際の作業場

――絵本作家としての今後の目標を教えてください。

絵本を描いて書籍として出版することは、これからも目標です。ですが出版できなかったとしても、絵本を描き続けることが重要だと思っています。好きなことなので、ずっと描き続けたい。そして自分の作品をもっと洗練させていきたいですね。

『おやこ』
ふくかわゆめみ / 著

アルファポリス第13回絵本・児童書大賞優秀賞受賞! コアラ、ペンギン、いぬ、ぶた……さまざまなどうぶつたちが、ページをめくるとぎゅ~っとくっつく親子の絵本。ファーストブックやあかちゃんのお祝いにもおすすめです。

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