「第12回アルファポリス絵本・児童書大賞」優秀賞受賞!
『だんごむしコーロコロ』作者 海野あしたさん
■ 真似したところで描けないものは描けない
――そのアカデミーで生まれたのが、第1作目の『だんごむしコーロコロ』。これはどういう発想で生まれたんでしょうか。
私は自分の精神年齢が3歳児ぐらいだと思っているので(笑)、絵本は単純に私が好きか嫌いかという判断基準で描いています。 子どもの頃ダンゴムシが好きで、よく集めて遊んでいました。子どもってちょっと残酷なところがありますが本当にそんな感じで、コロコロさせて楽しんでました。その頃のことを思い出して、「だんごむしコーロコロ~♪」っていうデタラメな鼻歌を歌いながら考えたストーリーです。ソフトクリームにぶつかったら面白いかな、アリが追いかけてきたらうわぁ逃げろ……というように童心に戻ってお話を考えていきました。最初の頃は紙に描いて、スキャンしてパソコンに取り込んでいましたね。
――子どもの視点で、「こうなったら面白いだろうな」という展開を考えたんですね。
いつも「面白いな」から発想することが多いですね。カエルがピョーンと飛んできたら面白いな、だんごむしがガムを踏んだらビョーンって空を飛んじゃうんじゃないかなとか。そういう発想の仕方です。
『だんごむしコーロコロ』の初期のラフ画
――セリフや言葉を考えるのはいかがでしたか。
絵本の基礎をちゃんと勉強したほうがいいなと思って、絵本教室にも通いました。そこは文章を書くのが得意な童話作家の先生がたくさんいらっしゃって、言葉に対してとても丁寧に指導していただきました。 絵で表現できることは言葉にしてはいけません、と言われてわからなくなったりしてしまったことも(笑)。 0~3歳児向けの絵本って言葉が少なくて、どっちかというとリズムを大切にしている印象だったので、自分はこのジャンルが向いているなと思いました。
――海野さんの絵柄は鮮やかでわかりやすく、気分が高揚するようなポップさがありますね。絵柄について初期はどんな苦労がありましたか。
自分のスタイルを見つけるまでは試行錯誤しました。絵本って紙に描かないといけないのかなと思っていたんですけど...。水彩やアクリルの絵の具を使ったら部屋を汚してしまうし、色鉛筆も上手く描けないし。いろんなパターンの作品をとりあえず描いてみながら、自分らしいやり方を模索する感じでした。ちなみに、そうやって実験していた頃の作品も「絵本ひろば」にアップしています。
絵本教室には、絵本作家のみやざきひろかずさんも講師を勤めていて、みやざき先生の柔らかくやさしい水彩画にもすごく憧れました。
でも真似したところで描けないものは描けないし、それよりも自分のいいところを伸ばそうと思っていました。
最初は紙をスキャンして取り込んでいましたが、今はペンタブで全部描いていますね。『あしあしぱあっ』の頃から完全にデジタル化したのですが、そのほうが効率もいいし、デジタル派の自分に向いていると思います。
パソコンだと色合いや構図の調整が容易にできるそう。 「とんとんとうばん」
■ 『だんごむしコーロコロ』の受賞の決め手
――作った作品を「絵本ひろば」に投稿するようになったきっかけはどのようなものでしたか?
私はX(旧Twitter)をよくやるのですが、そこに流れてきたのを見て「絵本ひろば」を知りました。描くのが早くて作品が溜まっていたので、試しに何作かアップしてみました。 読んだ方の評価や感想がわかって、読んでくれたんだと思うとテンションが上がりましたね。
――そして『だんごむしコーロコロ』が、第12回アルファポリス絵本・児童書大賞で優秀賞を受賞されました。
受賞と聞いたときは、
「チャンスの神様きたー!」って思いました(笑)。
以前通った教室の校長先生が、「チャンスはいつ来るかわからない。常に万全の体制をして、そのチャンスに備えなさい」とおっしゃっていたので、いろんな公募に応募していた時期だったんです。
公募ってたくさんの人が応募してくるので、落ちて当たり前。
落ちても、「次行こう。次、次」って思っていましたね。私の「あした」というペンネームは、過去を引きずらず明日のことだけを考えようっていう意味も込められているんですよ。
ただ、当時のあの絵柄でよく賞を取れたなとは思いましたよ(笑)。絵本ひろばさんは心が広いなぁと思ったんですが、画力だけじゃなく発想力なども含めて評価してくださったんでしょうね。
担当編集A:『だんごむしコーロコロ』は ストーリーの面白さと鮮やかな色使いが受賞の決め手 になりました。確かにだんごむしがだんごむしっぽくないというのはありましたが、カエルやヘビなどキャラクターが立っていますし、小さいお子さんたちが見るうえで優しくて楽しい冒険物語ですよね。基本的な展開で親御さんが安心してお子さんに読ませてあげられるお話なので、ぜひ書籍化しましょうという話になりました。