絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー

「第12回アルファポリス絵本・児童書大賞」優秀賞受賞!
『だんごむしコーロコロ』作者 海野あしたさん

『だんごむしコーロコロ』
海野あした / 著

「第12回アルファポリス絵本・児童書大賞」優秀賞受賞作! 『コロコロ コロコロ ころがって、だんごむしはどこへゆく?』――おうちから飛び出しただんごむしが、いろいろな生き物に出会う絵本。赤ちゃんの目も引くビビットな色彩で、だんごむしの冒険を楽しもう!

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「第12回絵本・児童書大賞」優秀賞受賞作 『だんごむしコーロコロ』 で書籍化を果たし、昨年第二作目となる 『あしあし ぱぁっ』 を出版した海野あしたさん。子どもの目を惹くビビットな色使いやストーリーの面白さは受賞時にも高く評価されました。オリジナリティあふれる作風や多彩なアイデアの源泉はなんなのでしょうか。

絵本ってこういうのもありなんやな

――海野さんが絵や絵本に興味を持ったきっかけは何でしたか?

物心がついた頃は『できるかな』ののっぽさんが好きで、物を作ることが好きでした。 あまり絵本にはなじみがなくて、気がついたら漫画ばかり読んでいましたね。 萩尾望都さんや竹宮惠子さんの作品、『花とゆめ』なんかを読みふけっていたので、小中学生の頃は漫画家になりたいと思っていました。高校時代に漫画家を目指していた友達と一緒に夏休みを利用して漫画を描いてみたんです。何かの漫画賞に応募したら、A賞、B賞の次の、C賞というのを取ったんですよ。

――いきなり受賞というのはすごいですね!

C賞なのでズラーッとたくさんいるうちのひとりですけどね(笑)。でもこんな大変なことを仕事にするのは無理だと思って、漫画を描くのはやめました。インテリアデザインの専門学校に進んだ後、建築事務所に就職したんですが、当時の環境や、社会の流れに馴染めなくて。その後も様々な仕事を転々としましたが、長続きしなかったんです。このままではダメだと思って、もともと興味があったウェブ制作について勉強しました。それ以降はずっとウェブクリエイターの仕事をしています。

――絵を描くことなどクリエイティビティにずっと興味があったんですね。

高校の時は油絵が描きたくて、半年ぐらい美術部にも入っていたんですが、展覧会に入選したら満足しちゃって辞めました。飽き性なんですよね(笑)。

――幼い頃はあまり絵本を読んでいなかった海野さんが、なぜ絵本を作ることになったのでしょう?

子どもに読み聞かせをするために図書館で絵本を何冊も借りるうちに、絵本ってすごく奥が深いんだなと思うようになりました。中でも衝撃を受けたのは、本屋さんで見つけた荒井良二先生の『ヒメちゃん』という絵本。 すごく自由で、絵本ってこういうのもありなんやな、って。絵本に対する概念がすごく変わったんですよ。 それで荒井先生のファンになったんですが、でもそのときは自分が描くなんて考えることもなく、ただ楽しいなと思って読んでいました。実際に作るようになったのは、ウェブ制作をしていたことが大きかったです。

海野さんの本棚。お子さんと一緒に読んだ絵本は開くと楽しかった記憶が蘇るそう。

――ウェブサイト制作をしたりという本業が。

私がウェブ制作の仕事をしていた頃は、Flash(音やグラフィックを組み合わせてウェブコンテンツを作成するソフト)が全盛期の時代がありました。Flashでアニメーションを作る勉強がてら、絵本のようなものを作り始めたんです。子どもも喜んでくれますしね。そうやって楽しみながら絵本っぽいものを作るようになりました。
子どもが成人するまでは子どもとの時間を大切にしようと思っていたので、優先順位の1位は子どもで2位が仕事。もう自分の時間なんてないですよね。ウェブの世界は常に進化しているので、勉強をするのも大変でしたし。 子どもが高校生になって子育てのゴールが見えてきたとき、「やっと自由になれる! 好きなことをやりたい!」と思いました。 ちょうどSNSで、荒井良二先生が講師を務めている学校があることを知り、「あの荒井先生に会えるの!?」とびっくりしつつ申し込みました。

憧れの絵本作家から学んだこと

――京都にある「夢」の学校、世界文庫アカデミーだそうですね。

そこは絵本の学校ではないんですよ。夢を持っている人たちが集まって、お互い刺激しながら少しずつ成長していくのが目的で。たとえば料理のケータリングを始めたいと思っている人、音楽で自分の可能性を広げたい人など、いろんな人たちがいました。 普通の絵本教室とは違って、自由に描いた絵本に対して、みんなに読んでもらって、アドバイスしてもらう感じでしたね。 そこで絵本を3、4冊作ったんですが、最初の1冊が『だんごむしコーロコロ』だったんです。

――ちなみに憧れの荒井先生からはどんなことを学びましたか?

荒井先生の授業は2回あったんですが、京都の鴨川でみんなで絵を描いたり、グループでお話を考えて、寸劇のように体を動かしながら表現するということをやりましたね。すごく自由で楽しかったです。荒井先生は休憩時間に子どもと凧揚げしていて、やっぱり自由な方なんやなぁって(笑)。おっしゃっていたのは、 「絵本は誰でも描けるんですよ」 ということ。私はそれまで、絵本って選ばれし者、崇高な世界だと思っていたので、自分が入るなんてとんでもないと思っていたんです。でも荒井先生は「絵本は誰でも自由に描いていいんです」って。グッと来ましたね。絵本そのままの温かいオーラに包まれた方で、その荒井先生の言葉は今もズシンと私の心に根付いています。