絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー


『だいかぞく』作者 南 知里さん

『だいかぞく』
南 知里 / 著

絵本ひろば「第1回読み聞かせ絵本大賞」大賞受賞作、待望の書籍化! とっても仲良しで、にぎやかな大家族の一日をのぞいてみませんか? 読み聞かせのプロで保育士の《聞かせ屋。けいたろう》氏が大絶賛!! 「もう一回読んで!」が止まらない、読み聞かせにぴったりな絵本。

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子ども達に実際に読み聞かせ、その反響で受賞作を決める「第1回読み聞かせ絵本大賞」で、満場一致の大賞受賞を果たした『だいかぞく』。作者の南 知里さんは、絵本を描き始めてから本作を出版するまで12年もの間絵本作家への夢を持ち続けていたそうです。子ども達から「もう一回読んで!」が止まらないと大人気の本作がどうやって生まれたかや、絵本作家への道のりについてお話を伺いました。

12年もの間持ち続けていた絵本作家への夢

――南さんはどんなきっかけがあって、絵本を描こうと思われたのですか。

美術系の短大に通っていたとき、サークルのクリスマスパーティで、隣りにいた女の子に『スノーマン』(レイモンド・ブリッグズ著)の絵本が当たっていたんです。そのときに初めて『スノーマン』を読ませてもらったんですが、感動してしまって。すぐに自分でも購入しました。あの絵柄が本当に素敵で、そのときに「私も絵本作家になりたいな」と思ったのがきっかけですね。卒業制作でも絵本を作りました。

『スノーマン』の影響も感じられる、過去作品の原画

――子どもの頃から絵を描くのは好きだったんですか?

好きでしたね。3歳の時に母の横顔を描いたら、あまりにもそっくりだったので両親がびっくりしたそうです。小学校の時はコンテストが大好きな先生がいたのでよく応募しては賞をもらっていました。なので自然と美大を受けたんですが、四年制の美大は全部落ちてしまって、それで短大に行きました。大学に行けなかったことが結構ショックで、絵を描くのをやめようとも思ったぐらい。卒業後に就職した職場では、イラストを自ら描く仕事だけでなくイラストの発注業務も経験するなど、いろんな経験をしました。退職してからはフリーのイラストレーターになって、キャラクターを作ったり、イラストを売り込みにいったりしていましたね。

――その間、絵本作家になりたいという夢を持ち続けていたのでしょうか。

イラストレーターのお仕事は注文された絵を描くものなので、自分の作品として残らないってことに気がついたんです。やっぱりストーリーを作って、絵本として残るものを作りたいと思うようになっていきました。その後、結婚して海外に引越して、出産しました。子育てをしている間は何もできなかったんですが、子どもが大きくなって仕事に復帰しようとなったときに、やっぱり絵本の仕事をしたいなって。育児で忙しくなる前に、創作キャラクターについての公募で優秀賞をいただいたんですが、そのときに動物のキャラクターを描いたんですね。こういうキャラクターで絵本を描きたいなという思いがずっとありました。育児が終わって最初に描いたのは、料理をするお話。そこから、本格的に絵本作家としてやっていこうと思いましたね。それから『だいかぞく』の本が出るまで12年もかかってしまったんですけど(笑)。

受賞した創作キャラクターをもとにして描いたという絵本の1ページ

――絵本の描き方はどうやって学びましたか?

『あらしのよるに』を描かれたきむらゆういち先生が主宰されている、「ゆうゆう絵本講座」に友人が行っていたので、私も行きました。その頃、ある絵本コンテストで入賞した作品があったので、それを出版したいと思っていたんですが、どうしたらいいかわからなかったんですね。大賞じゃないと出版のお話ってなかなかいただけないので。絵本教室ならそういう情報もわかると思うよと言われて、通い始めました。講座では、たとえば「おばけの話」というように課題を与えられて、手探りなりに描いて、それをみんなの前で発表するんです。面白い、つまらない。足りないものはなにか、構成的に意味がわからない……など、率直に批評されます。そうやって繰り返し作っていくうちに、子どもが入っていきやすいか、感情移入しやすいかなどの視点が身につきます。私が作る絵本は文章がすごく長いので、そこもどんどん減らしていったり。感性だけで作ってもいいんだけれども、やっぱり一冊の本にするとなると、読んだ人の心に何かを残さないといけないんですよね。とはいえ『スノーマン』のように、セリフも大きなストーリーもないけれど名作になっている絵本はたくさんあるので、悩んでしまうんですけどね(笑)。

――自分の中での理想もあきらめたくないですよね。

『スノーマン』は漫画のようにコマ割りがされていますけど、基本的に小さい子が読めないから、コマ割りはしないようにと言われますね。昔は絵本を描くと出版社に持っていって、編集者が見てくれて、よければ出版という感じでしたけど、少子化や景気の悪化もあって、次第に郵送だけになり、今はもうほとんど公募だけ。そうなると目立つ内容のものが受賞するような印象を受けて、余計に自分が描きたいものがわからなくなってしまったんです。

――絵本を買う親御さんに訴求しやすいものだったり。

絵本を買う親御さんというのは、やはり聞いたことのあるタイトルや、ベストセラーのようなスタンダードな本を買われることが多いんですよね。その一方で、公募で入賞するには目立たないといけない。わけがわからなくなって悩んでいたときに、絵本講座で「絵本ひろば」を紹介されて、すでに描いていた作品を8作ぐらい投稿しました。「絵本ひろば」は、読んだ方のコメントがつくのがいいなと思いましたね。どこを面白がってくれたのかがわかるし、励みになる。ずっと悩んでいたけれど、やっぱり自分の好きなものを描いていこうって自信を持つきっかけになりました。

初期に描かれた絵本や、絵本講座の課題で描かれた絵本