絵本ひろば

「絵本ひろば」から出版! 絵本作家インタビュー


『メロンパンツ』作者 しぶやこうきさん

メロンパンツは最終選考に残った作品の中で大きく賛否が分かれた作品

――そして『メロンパンツ』が第10回絵本・児童書大賞にて、特別賞を受賞されました。

ちょうど募集のタイミングだったのと、郵送ではなくweb上で簡単に応募できると知り気軽な気持ちで応募してみました。その後、アルファポリスの方から、「受賞候補作に残っています」という連絡をもらいました。僕はこれまでいろんな絵本コンテストに応募してきたんですが、初めて受賞候補になって、「これまで作ってきた作品の方向性は間違っていなかったんだ」と思えて嬉しかったですね。

――ここでアルファポリスの担当編集のAさんにもお話を伺いたいと思います。第10回絵本・児童書大賞はどれほどの応募があったんでしょうか。

担当編集A/この年の応募総数は450作でした。受賞作は7作。書籍化されているのは3作品です。応募作品は、編集部の選考メンバーが全作品に目を通すのですが、メロンパンツは最終選考に残った作品の中で大きく意見が分かれた作品でした。メロンパンとパンツという組み合わせに賛否あったものの、そのネガティブさを吹き飛ばすほどの痛快なストーリーはインパクト十分で、「実際に子どもと読んで大笑いした」という声も上がりました。

伝わってよかったなあっていうのが大きいですね。僕も、笑わせようと思って描いたのではなく、自分が面白いなって思ったことを表現した作品なので。「大笑いした」という感想をもらって、共感してもらえたんだなと思って嬉しかったです。

担当編集A/『メロンパンツ』は社内ですぐに書籍化の話が進みました。確かに、食べ物をパンツとして履くという点へのご意見もいただいたんですけど、そこを超えてくるぐらいのユーモアがある。だから担当したいっていう編集者も多かったんですよね。

――書籍化にあたって、絵を全部新たに描き下ろしていますね。

内容はほぼそのままで、絵柄を少し変えています。オリジナルでは描いていた輪郭線を、書籍版ではなくしました。いろんな絵柄を考えて、内容に合っているものをチョイスしました。

担当編集A/編集部からも絵柄や内容について提案はするんですが、しぶやさんはこの世界観をご自身の中にしっかり構築されているので、内容についてはそのままにしようということになりました。あとは本になったときにどうダイナミックに見せるかを話し合ったんですが、しぶやさんは描くのが早いので、いろんなパターンを描いてくれました。

上が書籍版、下がオリジナルの実際の原稿

絵本のアイデアも、退屈から生まれるもの

――しぶやさんの絵を描く道具についても教えてください。

下書きはあまりしっかり描かないようにしています。アクリル絵の具を使って、ライブ感を出すように描くというスタイルですね。もし失敗しても描き直せばいいので。

実際の作業場

――とても鮮やかな色使いですが、色で気をつけていることはありますか?

僕は色弱なので、色味がちゃんとわからないんです。混乱しないよう、キャラクターの色は原色を基本に、少し暗くしたり明るくしたりする程度。メインキャラクターはなるべく決まった原色を使っています。

――苦手だというカエルのビジュアルはどう考えましたか?

やっぱり自分がリアルなカエルが苦手なので、本物の写真を見ながら、デフォルメしてキャラクターっぽくしていきました。これならカエルが苦手な子どもでも大丈夫だろうっていうぐらいのレベルにしましたね。このカエルたちは僕の分身なので、目元や表情などは鏡を見ながら味付けしていきました(笑)。

――メロンパンがとてもおいしそうです。

メロンパンは美味しそうに見えないといけないと思ったので、メロンパンを買ってきて、見ながらいっぱい描きましたね(笑)。食べ物の色って難しい。一番力を入れたかもしれません。

キャラクターたちの練習画

――そのようにして出来上がった書籍『メロンパンツ』が発売されました。

あんまり実感がまだ湧かないですが(笑)。僕としてはようやくスタートラインに立てた気がしていますね。 書店の本棚で、僕が尊敬している荒井良二さんの本の横に『メロンパンツ』があって。そこでようやく、「夢が叶ったんだな」って思えましたね。

――普段、絵本作りのために心がけていることはありますか。

「常識を常識と思うな」じゃないですけど、物事をそのまま見ないようにしています。性格的にひねくれてることもあって(笑)、「どうしてこう書いてあるんだろう」って思ったら、「これ絵本になるかも」という発想につながるというか。最初から絵本のネタ集めをしようとは思っていないですね。北海道育ちなので、子どもの頃から、どこに行くにも車に乗っていたり、バスにずっと揺られていたりという時間が多かったので、その退屈しのぎにいろいろと想像するようになったんです。 絵本のアイデアも、退屈から生まれるものだと思っています。今はコンビニで働きながら絵本を作っているんですけど、単純作業の仕事をしているときは何か別の想像をしちゃいますね(笑)。

――しぶやさんの絵本作家としての夢を教えて下さい。

僕がやりたいのはナンセンスな絵本。長新太さんというナンセンスの巨匠のよう方がいらっしゃいますが、その後に続きたい。自分らしさは残しつつ、ナンセンスな絵本をたくさん描いていきたいですね。実家が北海道で農家をやっているんですが、絵本作家としてたくさん本が出せるようになったら、行く行くは北海道に帰って、農業と絵本を両方やりたい。今も忙しい時期は帰って手伝っているんです。地元の大自然も好きだし、農作業をしながら絵本のアイデアを考えたい。それが僕の理想ですね。

『メロンパンツ』
しぶやこうき / 著

東宝×アルファポリス「第10回絵本・児童書大賞」特別賞受賞作、待望の書籍化! 散歩中にメロンパンを見つけた、カエルのケロン。「ぜ~んぶ、おれのものだ!」とひとりじめしようとするけれど……? 親子で笑いが止まらない! ユーモアいっぱいの絵本。

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